0. 教訓
真空用クランプは「取付手順とフランジ及びシール材の清浄度が命」です。いくら力をかけても、基本手順を守らなければリークは止まりません。
1. 事例内容
NW25フランジの接続作業で、フランジ面の清拭とOリング点検を省略し、さらに蝶ねじクランプを一点のみで力任せに締め込んだ結果、片締め状態となってリークが発生。正しい手順を知らず、リーク箇所の特定に長時間を費やした。
失敗した人の声
「急いでいたので、フランジの清拭を『見た目きれいだから大丈夫』と省略してしまいました。Oリングも前回と同じものをそのまま使いました。」
「蝶ねじを締めるとき、一箇所だけギューッと締めれば密閉できると思っていました。まさか反対側が浮いているなんて気づきませんでした。」
「リークテストで漏れが出たとき、どこから漏れているのか全然わからず、パニックになりました。基本的な点検手順を知らなかった自分が情けないです。」
技術的背景
真空用クランプの蝶ねじタイプは1点締め構造のため、対角線上に均等な力が伝わりにくい。特に片締めが発生すると、締め付け部分の反対側に十分な圧縮力が働かず、その部分からリークが発生する。
また、フランジ面やOリングの微細な汚れも真空漏れの主要因となる。油分や微粒子がシール面に介在すると、わずかな隙間でも真空度に大きく影響する。
2. 原因
- 準備・点検工程の省略
- フランジ面とOリングの清拭・点検を「見た目問題なし」で省略
- フランジシール面の傷・損傷確認を怠った
- 微細なゴミや油分の除去を怠った
- Oリングの状態確認(傷・変形・劣化)を実施しなかった
- 締付手順の根本的誤解
- 蝶ねじクランプの1点締めの限界を理解していなかった
- 均等な締結が必要であることの認識不足
- 「力をかければ密閉できる」という間違った認識
- 片締め状態の見落とし
3. 影響・被害
- リーク箇所特定に大幅な時間ロス:クランプが原因だと気づくまでに 2時間 を費やした
- 再組立・再リークテストで追加 1.5時間 の工数発生
- 試験スケジュールが 半日遅延し、後工程に影響
- 過度な締め付けによりOリングの一部が損傷、交換が必要
- 蝶ねじ部分の変形により、クランプ自体も交換対象となった
4. 再発防止チェックリスト
- ✅ 準備・点検:フランジシール面に傷や損傷がないことを確認した
- ✅ 準備・点検:フランジ・Oリング・ガスケット表面の傷・ゴミ・油分を除去確認した
- ✅ センターリング装着:Oリング付きセンターリングを正しくフランジ溝にセットした
- ✅ クランプ配置:クランプをフランジ周りに均等に配置してから手締めを開始した
- ✅ 全周確認:一周して全体の緩みがないか確認した
- ✅ 目視確認:クランプ・フランジの対角部が浮いていないか目視確認した
- ✅ リークテスト:ヘリウムリークテストで最終的な気密性を確認した