タップ穴とキリ穴の違い
タップ穴 |
キリ穴 |
内側にねじ山(ネジ溝)が切られている穴 |
ただの円筒状の穴で、ねじ山はない |
ボルトを直接ねじ込んで固定できる |
ボルトを通すだけ |
ナットが不要 |
反対側のタップ穴またはナットと組み合わせて締結する |
片側からしか締結できないため、組み合わせる相手側は貫通穴が必要 |
両側から組めるため、汎用性が高い |
0. 教訓
「ねじが噛んだ感触=密着」ではない。フランジは面同士が触れて初めてシールが生きる。組む前に”タップ × タップ”になっていないか、必ずダブルチェックしよう。
1. 事例内容
研究室で残留ガス分析装置 (RGA) を追加するため、学生が小さなUHVチャンバーを組み立てていた。RGAとチャンバー側ポートはどちらもICF70タップフランジ。本来なら、片側は貫通穴フランジにしてボルトで締結する必要があった
ところが学生は “サイズが合えば大丈夫だろう” と、あり合わせのM6ボルトを差し込んだ。フランジ同士にはわずかな隙間が残ったまま。
組み上がった装置をポンプダウンすると10⁻¹ Pa付近で圧力が頭打ちになった。再度ヘリウムリークディテクタで調査したところ、フランジ周辺にリーク信号。
最終的に、貫通穴タイプのフランジに交換し再締結して解決したが、試料測定の予定は丸1日遅れ、交換部品とリーク検査の費用も余計にかかった。
失敗した人の声
「M6のボルトがきちんと噛んで締まっていくので、これで大丈夫だと思い込んでしまいました。何となく『あれ?』という感覚はあったのですが、『まぁ、しっかり締まったからいいか』と軽く考えてしまったんです。」
「ポンプダウンして圧力が下がらなかった時、心臓がドキドキしました。リークディテクタが反応した瞬間、『やってしまった』と血の気が引く思いでした。先輩に報告するのが本当に恥ずかしくて…。」
「結局、部品交換で1万円以上の費用がかかり、測定予定も1日遅れて他の学生にも迷惑をかけました。『タップ同士は絶対にダメ』という基本中の基本を知らなかった自分の無知が情けなかったです。今では必ずフランジの組み合わせを確認してから作業するようになりました。」
2. 原因
誤り |
影響 |
フランジのボルト穴に切り穴(貫通穴)とタップ穴があるとは知らず選定をしてしまった。
3. 影響・被害
- 試料測定の予定が丸1日遅れ
- 交換部品とリーク検査の費用が余計に発生
- 装置の信頼性への不安
- 他の学生の実験スケジュールへの影響
4. 防止策
- 接続前にフランジ形状を必ずペア確認
- タップフランジ同士が向かい合っていないか
- ボルト有効長が十分か
- 締付後に目視 & 触診でフランジギャップを確認
- 初回は必ずリーク検査を実施
- “たぶん大丈夫” は禁物。検査結果を記録し次回の基準に
5. 再発防止チェックリスト
- ✅ フランジ形状確認:タップ同士の組み合わせになっていないか事前確認した
- ✅ ボルト長さ確認:有効ねじ込み長さが規定値(ねじ径×1.5~2)を満たしている
- ✅ 締付後点検:フランジ面の密着を目視・触診で確認した
- ✅ リーク検査実施:ヘリウムリークディテクタで漏れがないことを確認した