失敗事例 #05
「Swagelok継手:チューブを差し込みすぎて固着、部品交換に」
0. 教訓
「何事もやりすぎ」は注意。
適正挿入+規定トルク=最高のシール性能
1. 事例内容
真空配管の組立作業中、Swagelok(スウェージロック)継手にステンレスチューブを接続する場面でのこと。「奥までしっかり差し込んだ方が密封される」と思い込み、チューブを必要以上に強く押し込んだ状態でナットを締結してしまった。
失敗した人の声
「『密封するには奥まで差し込むのが当然』と思い込んでいました。チューブを手で押しても抵抗があったのに、『これくらい普通だろう』と無理やり押し込んでナットを締めました。」
「配管テストで接続部を外そうとした瞬間、チューブが全く動かないことに気づきました。冷や汗が出ました。まさか固着するなんて想像もしていませんでした。」
「結局、継手もチューブも破壊することになり、上司に報告するのが本当に辛かった。基本的な構造を理解していれば防げた失敗だったと痛感しています。」
2. 原因
- 適正な挿入深さ(チューブストップ)を確認せず、力任せに差し込んだこと
- 「ナットを締めれば何とかなる」という誤解
- 継手構造の基本的な知識が不足していた
- 作業前の教育・指導が不十分だったことも背景にある
3. 影響・被害
- 締結後、継手を分解しようとしたところ、チューブがナット内部に固着して抜けなくなった
- チューブ先端がナット内面に強く押し付けられ、フェルールと一体で固まり、取り外し不可能な状態に
- 最終的に、チューブと継手の両方を破壊・交換することになり、装置の復旧が大幅に遅延
- 無駄な部品コストに加え、再配管に要する時間も発生し、作業工程全体に影響が出た
4. 防止策
Swagelok継手で重要なのは、「正確なチューブ挿入深さ」
チューブは継手のチューブストップ(底面)で止まる位置まで差し込むだけでよい。挿入基準線(マーキング)を入れることで、過挿入・抜けの確認が容易になる。無理な挿入や斜め挿入は、フェルールの変形や密封不良の原因となる。
組立前の準備と理解がすべて
初めての作業者には、事前に分解済み継手を見せて構造を理解させることが重要。練習では「締めた後に分解して観察」することで、フェルールの働きとチューブの状態を確認させる。
チューブ挿入時の正しい手順(Swagelok推奨)
参考動画: Swagelok継手の正しい組立方法
- 継手にチューブを軽く差し込む(無理に押し込まない)
- チューブが奥のストップに当たる感触を確認
- チューブ外側にマーキング(挿入基準線)を記入
- 指でナットを締め込んでいき、最後は規定の締付回転で完了
- 必要に応じて一度分解し、正しくフェルールが作用しているか確認
このような基本動作の理解と確認を怠ると、取り返しのつかないトラブルに繋がる。「適切な力加減」と「構造理解」こそが安全な配管作業の第一歩である。
5. 再発防止チェックリスト
- ✅ Swagelok継手の構造と動作原理を理解した
- ✅ チューブ端面のバリ取りを実施した(端面の傷はリーク要因となる)
- ✅ チューブストップへ軽く当てた(押付け過ぎ禁止)
- ✅ マーキング(線・テープ)をした(過挿入・緩み検出)
- ✅ 指締め後、規定回転で締付けた(1¼回転(1インチ以下))
- ✅ 締付後に線位置を再確認した(緩み・過締めチェック)
- ✅ 必要時に一度分解して内部確認した(初回教育時必須)
- ✅ 適正な挿入深さ(チューブストップまで)を確認した
- ✅ 規定トルクでの締付手順を習得した
- ✅ 締付後の点検・確認方法を理解した