失敗事例 #03
「ベローズバルブを締めすぎて内部を破損」
0. 教訓
「力いっぱい締めればいいわけではない」
ベローズバルブは繊細な精密機器です。視覚的な目印と、締めすぎないという意識を持つことが、安全で確実な運用につながります。
1. 事例内容
ある学生が真空配管に取り付けられたベローズバルブを閉める際、「しっかり止めないと漏れるかもしれない」と思い、ノブを限界まで強く締めました。その結果、内部の金属ベローズが潰れて変形し、バルブが正常に開閉できなくなりました。このバルブは再使用できず、装置を一時停止して交換対応となりました。一度大気開放してしまったため装置立ち上げにまた時間がかかってしまいました。
失敗した人の声
「真空配管だから絶対に漏れてはいけないと思って、ノブをきつく締めました。手に抵抗を感じても『まだ足りないかも』と思って、さらに力を入れて回し続けました。」
「次に開けようとした時、ノブが重くて動かなくなっていることに気づき、背筋が凍りました。先生に報告すると、内部のベローズが潰れて使えなくなったと言われ、頭が真っ白になりました。」
「高価な機器を壊してしまった罪悪感と、実験が止まってしまった申し訳なさで、その日は眠れませんでした。『適度な力で十分』ということを身をもって学びました。」
2. 原因
- ベローズバルブの内部には、薄い金属でできた蛇腹構造(ベローズ)が使われており、非常に繊細です。
- ごくわずかな動きでバルブを開閉する設計になっているため、力を入れて締めすぎるとベローズが変形・破損します。
- 「止まるまで回す」「強く締めれば安心」といった誤った認識が故障の原因になります。
3. 影響・被害
- ベローズバルブの完全破損により、部品交換が必要となりました。
- 装置の一時停止により、実験スケジュールが遅延しました。
- 大気開放による装置の再立ち上げ作業が発生し、追加の時間とコストが必要となりました。
- 高価な精密機器の損失により、研究予算への影響が生じました。
4. 防止策
1. マジックなどで目印をつける
- ノブとバルブ本体のそれぞれに「ここまで回す」位置の印をつけておくことで、締めすぎや開けすぎを防止できます。
- この印は誰が操作しても共通の目安となり、特に複数人が扱う装置では効果的です。
2. 操作は指導者の立ち会いのもとで行う
- 初めて扱う人は、必ず経験者や指導者の立ち会いのもとで操作し、「止める感覚」を習得するようにします。
3. 「止まったら、それ以上回さない」を徹底
- ベローズバルブは軽い力で止まれば十分に密閉される構造です。
- 「もう少し締めたほうがよいかも」と感じても、それ以上回さないという意識が必要です。
5. 再発防止チェックリスト
- ✅ ベローズバルブの構造と注意点を理解した
- ✅ 目印(マジックペン等)を適切な位置に記入した
- ✅ 「止まったらそれ以上回さない」原則を確認した
- ✅ 初回操作を指導者と一緒に実施した
- ✅ 適切な締め具合の感覚を体得した
- ✅ 定期的な目印位置の確認方法を理解した
- ✅ 操作前後に印がずれていないか確認した