真空ポンプには大きく分けて 「気体輸送式」 と 「蓄積式」 の2種類があります。
チャンバー内の気体を掻き出し、外に排気する方式です(例:ロータリーポンプ、ドライポンプ、ターボ分子ポンプ)。 風呂の水を手桶で掻き出すイメージで、ある程度真空が進むと、 ポンプからの逆流が支配的となり、回してもそれ以上は掻き出せなくなります。 大気圧〜高真空の領域で用いられます。
スパッタリングや冷却などを利用して、ポンプ内部に気体を蓄積することで排気します(例:イオンポンプ、クライオポンプ)。 掃除機がゴミを袋に集めるイメージで、内部が気体で満杯になるとそれ以上は排気できません。 主に高真空以上で用いられます。
カテゴリ | ポンプ名 | 特徴・用途 | 起動可能圧力/到達真空度(目安) |
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【1】容積輸送式ポンプ (粗引き用) |
ロータリーポンプ(油回転) | 安価で扱いやすい。油を使用。 一般的な粗引き・大気からの排気に使用 |
起動:大気圧(~10⁵ Pa) 到達:1~0.1 Pa(単段~二段) |
ドライポンプ(ダイアフラム) | オイルフリー・小型。 クリーン用途の粗引き・薬液系に適合 |
起動:大気圧(~10⁵ Pa) 到達:10³~10² Pa |
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ドライポンプ(スクロール) | オイルフリー・低騒音・低振動。 クリーン用途の前段粗引きに使用 |
起動:大気圧(~10⁵ Pa) 到達:1~0.1 Pa |
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ドライポンプ(スクリュー) | 大流量に強い。 産業用途や大型装置の前段粗引きに使用 |
起動:大気圧(~10⁵ Pa) 到達:1~0.1 Pa |
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ピストンポンプ | 高い排気速度。やや大型。 産業用途や大型装置に使用 |
起動:大気圧(~10⁵ Pa) 到達:1~数 Pa |
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【2】ブースターポンプ (中真空補助用) |
ルーツポンプ(メカニカルブースター) | オイルフリーでパーティクルフリー。 粗挽きポンプの排気速度を大幅に向上 |
起動:数百 Pa 以下 到達:背圧(粗引き)ポンプに依存 |
【3】運動量輸送式ポンプ (高・超高真空用) |
ターボ分子ポンプ | 高速回転翼で分子を叩き出す。 半導体装置・分析装置・研究用途に広く使用 |
起動:10~100 Pa 以下 到達:10⁻⁶~10⁻⁸ Pa(条件により ~10⁻⁹ Pa) |
拡散ポンプ | 油蒸気ジェットで分子を搬送。 大型装置やコーティング装置などで使用 |
起動:~1 Pa 以下 到達:~10⁻⁷ Pa(良好なトラップ併用時は ~10⁻⁸ Pa) |
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【4】気体貯めこみ式ポンプ (蒸着・吸着による) |
クライオポンプ(低温ポンプ) | 気体を低温で凝縮・吸着。 水蒸気大量処理や希ガス・水素系ガスの捕集に有効 |
起動:10⁻¹ Pa 以下 到達:10⁻⁷Pa |
スパッタイオンポンプ | 気体をイオン化し電極に埋め込み吸着。 超高真空・長期安定運用に適する |
起動:10⁻²~10⁻³ Pa 以下 到達:10⁻⁷~10⁻¹⁰ Pa |
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ゲッターポンプ | 活性金属の化学反応で気体を吸着(NEG 等)。 超高真空の実験装置・電子顕微鏡などに使用 |
起動:活性化後・10⁻¹ Pa 以下で有効 到達:10⁻⁸~10⁻¹⁰ Pa |