0. 教訓
高電圧系ではアース間に電位差が生じることがあるので、高電圧系と低電圧系のアースは物理的に分離することが重要です。
1. 事例内容
ある研究室では、実験のために、高電圧電源(数百ボルト)で電極を駆動しながら、データロガー機能付きのPC(低電圧系)で測定制御を行っていました。PCは一般的な100Vコンセントから電源を取り、USBで測定機器と接続していました。
測定機器と電極間の配線作業中、高電圧電源(高電圧系)からPC(低電圧系)に電流が流れてしまったことで、PC(低電圧系)のUSBポートが焼損。同時に、研究室全体のブレーカーも落ちました。幸い、作業者に怪我はありませんでしたが、一歩間違えれば感電事故に直結する危険な状況でした。
失敗した人の声
「高電圧系とPC(低電圧系)を接続するときに、アースは共通で問題ないと思い込んでいました。
「バチッという音が鳴った瞬間、目の前で青白い火花が散って、PCの電源が突然落ちました。ブレーカーまで落ちて研究室全体が停電し、心臓が止まるかと思いました。」
「修理費用が十数万円かかっただけでなく、実験データも失いました。何より、もし手を伸ばしていたら感電していたかもしれないと思うと、今でも背筋が寒くなります。アースの電位差を甘く見てはいけないと痛感しました。」
2. 原因
- 高電圧電源とPCがアース(GND)を共通化していた
- 大きな電流が流れたことによって高電圧電源のGNDが高い電圧を持ってしまった
- それによる電圧差によってPC側に高電流がかかってしまった
- PCの内部回路がその電流経路となり、焼損とブレーカー遮断を引き起こした
3. 影響・被害
- PCのUSBポートが焼損し、機器の修理・交換が必要となった
- 研究室全体のブレーカーが落ち、他の実験にも影響を与えた
- 実験データの損失した
- 一歩間違えれば作業者の感電事故に至る危険な状況だった
4. 防止策
- 低電圧機器(PCやロガー)と高電圧系のGNDは物理的に分離する
- GNDをつなぐ前に、電位差がないかをテスターで確認する習慣をつける
- 高電圧系と低電圧系の接続には必ず絶縁を考慮した設計を行う
5. 再発防止チェックリスト
- ✅ 電位差確認:GND接続前にテスターで電位差を測定したか
- ✅ 絶縁設計:高電圧系と低電圧系の間に適切な絶縁回路を設けたか
- ✅ 系統分離:PCなどの低電圧機器のGNDを高電圧系から物理的に分離したか
- ✅ 安全確認:配線作業前に電源系統の安全性を十分検討したか
- ✅ 保護回路:万一の場合に備えた適切な保護回路を設置したか