失敗事例 #18
0. 教訓
チャンバーや配管は一見「ただの金属部品」に見えても、真空装置には電気を使う機器が多数組み込まれており、その中には高電圧を扱う危険な部分もあります。この事例では「今日は触らないから大丈夫」という慢心が生命に関わる事故を引き起こしました。手順という”厚い絶縁”で自分を守ってください。――次に同じことが起きたら、運は味方してくれないかもしれません。
1. 事例内容
研究室配属から三か月目、私は先輩の指示で小型チャンバーの改造に取り組んでいた。ただ真空配管を組み替えるだけの軽作業――電気の知識が浅い私は導通チェックを怠ってしまった。
午後も遅く、作業は終盤。チャンバー側のフランジのボルトを増し締めしようと手を伸ばした瞬間、耳の奥で”ビリッ”と破裂音が鳴り、視界が白くはじけた。次の瞬間、左腕を通して身体中に大きな電流が突き抜け、膝が抜けるように床へ崩れた。「終わった」――本当にそう思った。幸いにも、軍手越しに触れた手のひらが焦げただけで済んだが、その夜から一週間、寝返りのたびに心臓の鼓動が耳元でドクドクと鳴り、眠ることすら怖かった。
失敗した人の声
「軽作業だと思い込んで、電源チェックを後回しにしてしまった。まさか配管のフランジが通電しているなんて考えもしなかった」
「感電した瞬間、視界が真っ白になって、身体に稲妻が走った感覚。床に崩れながら『死ぬかもしれない』と本気で思った」
「一週間は心臓の鼓動が異常に感じられて、夜も眠れなかった。軍手と運に救われただけで、一歩間違えれば命を落としていた」
2. 原因
どこで間違えたのか
- 導通を切る手順を省略
通常はブレーカを落とし、電源ラインをテスターで確認してから機材に触れる、と先輩に教わっていたが、その意味もよくわかっていない私は「今回は大丈夫」と勝手に油断していた。
- ダブルチェック無し
注意点の共有をせずに一人で黙々と進めていたため、先輩も異常に気付けなかった。
- 電気に対する知識不足
実作業の経験が少なく、感電の恐ろしさを甘く見ていた。
3. 影響・被害
感電により以下の被害が発生した:
- 身体的被害:左腕を通じた電流により、手のひらが焦げる火傷を負った
- 心理的影響:一週間にわたり心臓の鼓動異常への恐怖により睡眠障害が発生
- 潜在的リスク:致死レベルの感電まで紙一重の状況だった
4. 防止策
再発防止のポイント
- 「ブレーカ遮断 →通電確認」を必ず作業前に実行する
- 作業時は先輩と手順の確認をする。手順を飛ばすときは必ず第三者の許可を得る
- あらかじめ電気の事故の事例を知っておき、その危険性を確認しておく
5. 再発防止チェックリスト
- ✅ 電源遮断確認:作業前に該当する装置のブレーカを落とし、電源ランプの消灯を確認する
- ✅ 通電チェック:テスターを使用して、触れる予定の金属部分が通電していないことを確認する
- ✅ 絶縁手袋の着用:軍手ではなく、電気用絶縁手袋を着用して作業する
- ✅ 作業手順の共有:先輩や同僚に作業内容と安全確認手順を報告し、承認を得る
- ✅ 二人体制での作業:一人では電気作業を行わず、必ず監視者を配置する
- ✅ 電気回路図の確認:作業対象の配管やフランジに電気が通っている可能性を事前に調査する