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  2. 真空排気の全体像と基礎解説
真空排気ガイド

真空排気の全体像と基礎解説

🎯 このガイドの使い方
真空技術が初めての方は、まず「0. 全体像」で大まかな流れを掴んでから、各セクションを順番に読み進めてください。
数式は覚える必要はありませんが、「なぜその式になるのか」の理由を理解することが大切です。

0. 真空排気の全体像

真空排気は段階的に圧力を下げていくプロセスです。
これは登山に例えると、一気に頂上を目指すのではなく、ベースキャンプを設営しながら段階的に高度を上げていくのと似ています。

💡 圧力の基準について
まず基本的な圧力の関係を覚えましょう。大気圧 = 0.1 MPa = 1.0 × 10⁵ Paです。これは絶対圧での表現です。
真空技術では絶対圧(完全真空を0とした圧力)で表現することが多いです。
軽い減圧程度や加圧だと「ゲージ圧」(大気圧を0とした圧力)を使用することが多いです。
詳しい圧力の基礎知識は はじめての真空技術入門をご参考ください。
💡 なぜ段階的なのか?
各圧力域で気体の流れ方が変わるため、それぞれに適したポンプが必要になります。
例えば、大気圧付近では気体分子が密集していて「団体行動」をしますが、高真空では分子がバラバラに動く「個人行動」になります。
段階典型圧力域 (Pa)主な流れ状態代表的なポンプおもな目的
大気 → 粗引き105 → 102粘性流
(分子が密集、団体行動)
ロータリーポンプ、ドライスクロール大気を一気に抜いて 102 Pa 付近へ
(掃除機のように大量の空気を吸う)
粗引き → 高真空102 → 10-3中間流(遷移流)
(団体と個人の中間)
ルーツブロワ+ロータリ、ターボ分子ポンプ高真空ポンプが動ける圧力まで下げる
(次の段階の準備)
高真空 → 超高真空10-3 → 10-7分子流
(分子が個人行動)
ターボ分子、クライオ、イオンポンプ半導体・表面分析など
(製造や研究用途)
超高真空 → 極高真空10-7 → 10-10分子流
(ほぼ宇宙空間レベル)
イオン、NEG、チタン昇華研究用途 (加速器, STM など)
(最先端の科学実験)
⚠️ 初心者の陥りがちな誤解
「高性能なポンプ1台で一気に極高真空まで引けるのでは?」と思いがちですが、これは不可能です。
各段階で気体の性質が変わるため、段階に応じたポンプの組み合わせが必要です。

1. 気体のふるまい

真空排気を理解するには、まず気体がどのように振る舞うかを知る必要があります。
ここでは最も基本的な3つの関係式を覚えましょう。

なにが分かる?覚えたい式かみ砕きポイント実生活での例
圧力・体積・温度の関係PV = nRT風船を暖めると膨らむのと同じ。
「P×V は温度に比例」
夏の暑い日に車のタイヤの空気圧が上がる
分子1個あたりで考えるP = nkTn は分子密度 (1 m3あたりの個数)。
分子1個の平均エネルギーは kT
電車の混雑度(人数密度)が高いほど圧迫感(圧力)が強い
平均自由行程 λ
(分子が次の分子と衝突するまでの距離)
λ = 1/(√2 π σ² n)真空に近づくほど分子がスカスカ
→ λ が長くなる。
例:室温(20℃):λ=約7mm/1Pa
満員電車では歩けない(λ小)
空いた電車では自由に歩ける(λ大)

記号の説明

記号意味単位覚え方・メモ
P圧力 (Pressure)Pa (パスカル)1 Pa = 1 N/m²
大気圧 = 10⁵ Pa
V体積 (Volume)1 L = 10⁻³ m³
ペットボトル 1本 = 0.5 L
n物質量または分子密度mol または個/m³文脈で変わる。PV=nRTでは物質量、P=nkTでは分子密度
R気体定数8.314 J/(mol·K)「アボガドロ数 × ボルツマン定数」と覚える
T絶対温度 (Temperature)K (ケルビン)T(K) = T(℃) + 273.15
室温 = 300 K
kボルツマン定数1.38 × 10⁻²³ J/K「分子1個あたりの気体定数」
λ平均自由行程m分子が他の分子と衝突するまでの平均距離
σ分子の衝突断面積空気の場合 = 3.7 × 10⁻¹⁰ m (3.7 Å)
分子の「大きさ」を表す
💡 平均自由行程って何?
分子が他の分子と衝突するまでに進む平均距離です。
大気圧では約7 nm(髪の毛の太さの1万分の1程度)ですが、真空になるほど長くなります。
極高真空では数kmにもなります!
🧮 暗算のコツ
平均自由行程の暗算式「λ = 7 mm × (1 Pa / P)」を使えば、任意の圧力での λ がすぐ計算できます。
例:P = 0.1 Pa なら λ = 7 × (1/0.1) = 70 mm
例:P = 10 Pa なら λ = 7 × (1/10) = 0.7 mm

2. 流れの区分 (クヌーセン数)

気体の流れ方は圧力によって大きく変わります。これを判断するのがクヌーセン数です。

クヌーセン数の定義: K = λ / D

💡 クヌーセン数の直感的理解
「分子の歩幅(λ)」と「道幅(D)」の比です。道幅に比べて歩幅が小さければ、分子同士がぶつかり合いながら進みます(粘性流)。
歩幅が道幅より大きければ、壁にしか当たらずに進みます(分子流)。
流れの名前目印
(クヌーセン数)
何が起きている?身近な例計算で使う式
粘性流
(Viscous flow)
K < 0.01分子は団体行動。液体のように流れる
分子同士の衝突が支配的
掃除機のホース、水道管Poiseuille式
(圧力に比例)
中間流
(Transition flow)
0.01 < K < 0.3団体行動と個人行動の間
複雑で予測困難
102 Pa 前後の配管補正係数を使用
(実験値に頼る)
分子流
(Molecular flow)
K > 0.3分子は壁としか衝突しない
個人行動、ランダムウォーク
極高真空、宇宙空間クヌーセン式
(圧力に無関係)

記号の説明

記号意味単位覚え方・メモ
Kクヌーセン数無次元「分子の歩幅 ÷ 道幅」で流れ方を判定
λ平均自由行程m前章で計算済み。真空度で大きく変わる
D配管内径mDiameter(直径)。外径ではなく内径を使用
🔍 重要な気づき:太い配管でも高真空で分子流になる例
例:D = 200 mm(大口径配管)、P = 10⁻⁴ Pa(高真空)の場合
• λ = 7 mm × (1 Pa / 10⁻⁴ Pa) = 70 m
• K = λ / D = 70 m / 0.2 m = 350 > 0.3
→ 分子流領域

一方、D = 200 mm、P = 100 Pa(粗引き段階)だと
• λ = 7 mm × (1 Pa / 100 Pa) = 0.07 mm
• K = 0.07 mm / 200 mm = 0.00035 < 0.01
→ 粘性流領域
⚠️ 中間流(遷移流)での注意
中間流領域(クヌーセン数 0.01〜0.3)では計算が複雑になります。
実用的には、安全側を取って分子流の式で計算することが多いです。
これは、分子流式で計算すると実際より悪い性能を想定することになり、設計上の安全余裕が生まれるためです。

3. コンダクタンス C

コンダクタンス(conductance)は、配管の「通しやすさ」を数値化したものです。
水道管に例えると、太くて短いホースほど水がよく流れるのと同じです。

💡 コンダクタンスの直感的理解
電気の「コンダクタンス」(電気の通しやすさ)と同じ概念です。
数値が大きいほど気体が通りやすく、真空引きが早くなります。単位は [m³/s] または [L/s] です。
流れ領域円筒管のコンダクタンス Cざっくり特徴覚え方
粘性流
(高圧領域)
C = 1349 D⁴ P / LD⁴ と平均圧力 P に比例
粗引き段階で効く
「太さが命」
直径2倍で16倍改善
分子流
(高真空領域)
C = 121 D³ / L圧力に無関係
到達圧力はリークやアウトガスで決まる
「太さと長さだけ」
圧力は関係なし

記号の説明

記号意味単位覚え方・メモ
Cコンダクタンスm³/s または L/sConductance(通しやすさ)。大きいほど良い
D配管内径mDiameter(直径)。外径ではなく内径
L配管長さmLength。曲がりがあると実効的に長くなる
P平均圧力Pa粘性流でのみ使用。P = (P₁ + P₂) / 2
🔧 設計のコツ
基本は「太く・短く・シンプルに」
コンダクタンスを大きくする = 配管を太くする or 短くすること
– 粘性流ではD⁴に比例するので、直径を2倍にすると16倍改善
– 分子流ではD³に比例するので、直径を2倍にすると8倍改善
– 長さは逆比例なので、半分にすると2倍改善
– 曲がりやバルブは抵抗になるので最小限に
⚠️ よくある設計ミスと注意点
1. 配管が細すぎるケース:
高性能なポンプを選んでも、細い配管を使うとボトルネックになります。
ポンプの性能を活かすには、配管のコンダクタンスも十分に大きくする必要があります。

2. 配管を太くしすぎるケース:
コンダクタンスを大きくしようと配管を太くしすぎると、チャンバー内の容積が増加し、排気時間が長くなる場合があります。
また、材料費やスペースの制約もあるため、適切なバランスが重要です。
🧮 実用的な換算
粘性流係数 1349 の由来:
理論式 C = πD⁴P/(128μL) で、空気(300K)の粘性率 μ = 1.84×10⁻⁵ Pa·s を代入

分子流係数 121 の由来:
理論式 C = (π/8)D³√(8RT/πM) で、空気(M = 29 g/mol、300K)を代入

単位について: 1 m³/s = 1000 L/s

4. ポンプダウン時間 Δt

「どのくらいで目標圧力に到達するか?」を計算する最も重要な式です。

Δt = V / S_e × ln(P_start / P_target)
💡 式の意味を理解しよう
この式は「容器の大きさ ÷ ポンプの実効速度 × 圧力比の自然対数」です。
– 容器が大きいほど時間がかかる(当たり前)
– ポンプが速いほど早く終わる(当たり前)
– 圧力を1/10にするのも1/100にするのも、時間の増加は対数的(意外!)
記号意味初心者メモよくある間違い
Vチャンバ容量 (L)牛乳パック 1本 = 1 L
ドラム缶 = 200 L
配管の容積を忘れる
S₀ポンプ定格速度 (L s⁻¹)カタログ値
(理想的な条件での値)
定格値をそのまま使う
C配管コンダクタンス (L s⁻¹)上の章で計算
(配管の通しやすさ)
配管抵抗を無視する
S_e有効排気速度 (L s⁻¹)実際にチャンバで発揮される速度
1/S_e = 1/S₀ + 1/C
これを使わずにS₀で計算
🧮 計算の手順
1. 配管のコンダクタンスCを計算
2. 有効排気速度S_eを計算:1/S_e = 1/S₀ + 1/C
3. ポンプダウン時間を計算:Δt = V/S_e × ln(P_start/P_target)
4. 安全率を見込んで1.5〜2倍しておく
⚠️ この式が使えない場合
– ガス放出(アウトガス)が多い場合
– リークがある場合
– プロセスガスが発生する場合
これらの場合は定常状態の計算(Q = S × P)が必要です。

5. 設計ステップ(例題)

実際の設計例を通して、計算手順を確認しましょう。

💡 設計の教訓
配管を太くするだけで、排気時間が大幅短縮!
真空システムでは「配管設計がすべて」と言っても過言ではありません。

6. よくあるギモン Q&A

QA補足説明
σ はいつも 3.7 Å で良い?空気(N₂/O₂)の平均値。H₂ のような軽いガスはもっと小さい。He: 2.2 Å, H₂: 2.9 Å, Ar: 3.4 Å
混合ガスでは重量平均を使用
分子流の C が圧力無関係?車がほとんど走っていない高速道路と同じ。幅 (D³) だけで決まる。分子同士が衝突しないので、密度は影響しない
ただし温度は√T に比例
粘性流式に P が入るのは?「渋滞するほど車が多いと流量も増える」イメージ。分子同士の衝突で運動量が伝達されるため
圧力が高いほど「押し流す力」が強くなる
なぜ ln(自然対数)?圧力減少が指数関数的だから。10→1も100→10も同じ時間。放射性物質の半減期と同じ原理
電卓の ln ボタンを使えばOK
実際の排気時間がもっと長いアウトガス、リーク、温度変化、初期過渡応答が影響。初回は壁面からの水分で時間がかかる
安全率として計算値の2倍を見込む
🔍 トラブルシューティング
計算より実際が遅い場合:
– 配管の漏れをチェック
– ガスケットの状態確認
– アウトガス対策(ベーキング)
– 配管内の汚れ・油分除去
計算より実際が早い場合:
– 実際の圧力がもっと高い可能性
– ゲージの較正をチェック

7. 設計の三原則

🎯 絶対に忘れてはいけない3つのポイント
  1. クヌーセン数で式を選ぶ
    • まず K = λ / D を計算
    • K < 0.01 なら粘性流式、K > 0.3 なら分子流式
    • 迷ったら分子流式で安全側設計
  2. 配管は太く・短く・シンプル
    • 直径を2倍にすると、コンダクタンスが8〜16倍改善
    • 曲がりや継手は最小限に
    • 「ポンプは高性能、配管は細い」は最悪の組み合わせ
  3. Δt の 6 割は粗引きが支配:最初の 1000 Pa が勝負
    • 大気圧→100 Paまでの時間が全体の大部分
    • 粗引きポンプの選定が最重要
    • 高真空ポンプを高性能にしても、粗引きが遅いと意味がない

8. 次のステップ

📊 実務レベルアップ

  • Excel で自動計算シートを作る
    • クヌーセン数判定の自動化
    • コンダクタンス計算の自動化
    • 複数の配管要素の直列接続計算
  • ガス負荷を加えた最終圧力シミュレーション
    • アウトガス速度の見積もり
    • 定常状態での到達圧力計算:P = Q / S
    • リーク許容値の設定
  • 多段ポンプの切替圧最適化
    • ロータリ→ルーツ→ターボの切替タイミング
    • 各段の圧力分担最適化
    • エネルギー効率の最大化

🧪 応用分野への展開

  • 半導体製造プロセスでの真空技術
  • 表面分析装置(XPS, AES, STM)
  • 薄膜成膜技術(スパッタ、蒸着)
  • 質量分析計の真空設計
🎓 最後に
真空技術は理論と実務の両方が重要です。
このガイドで基礎を理解したら、実際の装置で経験を積み、不明点は必ず実験で確認しましょう。
理論計算と実測値の違いから、多くのことが学べるはずです。
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